生物多様性の経済的評価の確立(パヴァン・スクデフ)
- Resisted date2016.12.30 |
- Movie Time6:16 |
2010年。国連の定めた生物多様性年であると共に、10月には生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が開催される本年は、まさに生物多様性という非常に重要な課題に対し、国、企業、民間、そして市民が一丸となって取り組むきっかけとなる大切な年です。まだまだ認知度の低い生物多様性ですが、現在、生物多様性が私たちの人間生活といかに結び付いているのを研究する様々な動きがあります。
今回の番組でご紹介する「TEEB(The economics of ecosystems & biodiversity)」もその一つです。TEEBという名称自体、まだまだ御存じない方も多いと思いますが、Green TVはこのTEEBの研究リーダーを務めるパバン・スクデフ氏にその実体と生物多様性との関わりついて取材してきました。
TEEBは、生物多様性版のスターンレビュー(2006年に公表され地球温暖化対策に大きく影響を与えた報告書)と呼ばれ、生物多様性分野における研究を推進するために2007年3月にドイツ・ポツダムで開催されたG8+5環境大臣会合で立ち上がったプロジェクトです。ドイツのボンで開催された生物多様性条約第9回締約国会議(COP9)で、「生態系と生物多様性の経済学(TEEB)」として中間報告レポートが発表されました。その目的は大きく2つあり、一つ目は生態系や生物多様性の損失による経済的・社会的損失がその程度の規模に達するかを示すこと、そしてもう一つは各国の政策決定者や地方自治体、事業者や市民に対して、この危機に対する具体的な対処方法を示すことにあります。
今年中に、TEEBの最終報告書が発表される予定で、COP10に向けて世界各国から収集した情報を踏まえTEEB事務局による作業が進められています。最終報告書では、対象主体によって政策当局者向け、地方自治体向け、企業向け、市民・消費者向けと4つのパートに分けられレポートがまとめられることになっています。
経済というと、一般市民には直接関わりがないように思われがちですが、上記の通り、TEEBは決して政府や企業だけに向けられたものではなく、私たち市民・消費者をも対象とした重要な報告書です。パバン氏も取材中におっしゃっていましたが、本レポートは世界各地の多くの事例を盛り込むことにより、より分かりやすく生物多様性と人間活動との関わりを具体的に明示しています。私たちの生活と生態系ならびに生物多様性は密接に関係しており、互いに影響し合っているという実体を、本レポートを通じて改めて考えてみませんか?
【参考URL】
●TEEB中間報告
住友信託銀行が、日本生態系協会ならびに日本総合研究所と共同で翻訳した日本語版のTEEB中間報告です。ぜひご覧下さい。
http://www.sumitomotrust.co.jp/csr/innovation/biology/index.html
●TEEBオフィシャルサイト(英語)
http://www.teebweb.org/