現在、アフリカ大陸が抱える深刻な課題のひとつが水不足。地球温暖化による異常気象のみならず、過度な地下水の汲み上げや森林破壊などによって、この地域では、慢性的な水不足に悩まされています。

国際連合環境計画（UNEP）により製作された動画「Africa Water Resources Atlas」は、アフリカ各地の水資源の現状を、衛星画像と現地の取材インタビューを織り交ぜて紹介しています。世界第6位の大きさを誇っていたチャド湖が干上がり、アフリカ大陸最高峰のキリマンジャロでは氷が融けている…。その経過を実際の衛星画像で見ると、アフリカ大陸の環境が、たった20年足らずの間に、いかに変化してしまったかが、改めて実感されます。

この環境変化は地域で生活する人々にも深刻な影響を与えています。たとえば、モーリタニアなどの西アフリカの半乾燥地域では、水源を確保するために多くの井戸を掘らねばならず、日常生活を逼迫させています。また、セネガルでは雨不足が農作物に影響を及ぼし、収穫が悪化。各コミュニティでは、農地に新しい灌漑技術を導入したり、地域全体で雨水を確保するため大規模な貯水タンクを設置したりなど、限られた水資源を効率的に活用するための工夫が尽くされていますが、抜本的な課題解決のためには、環境破壊を食い止めるための国際的な取り組みも不可欠です。UNEPでは、科学的な見地から地球環境の観測を継続させるとともに、世界のリーダーや多くの人々に水不足の問題を広く啓発し、具体的なアクションにつなげたいとしています。

水不足の課題はアフリカだけではなく、アジアの内陸部や南米の一部の地域でも深刻になっており、世界全体で解決すべき問題です。水資源に恵まれた日本で生活する私たちも、この貴重な資源を節約して使う心がけが必要なのはもちろんのこと、いま水不足に苦しんでいる地域の現状を正しく知ることは大切なことです。ぜひこの動画を通じて、アフリカ大陸の水不足の現実を実際に見てみてください。

執筆：松岡由希子

［関連サイト］
●「UNEP」によるアフリカ諸国の水資源予測（英語）
UNEPや国連アフリカ経済委員会（United Nations Economic Commission for Africa）のデータを元に作成された「アフリカ諸国の2025年における水資源予測グラフ」が掲載されています。
http://maps.grida.no/go/graphic/water_availability_in_africa