開発の代償~追いやられる野生動物
- Resisted date2009.04.17 |
- Movie Time5:07 |
今回ご紹介する映像の舞台は、米国コロラド州のピケインス盆地。ここでエネルギー産業の発達により行き場を失ったシカと、開発と自然保護を目の当たりにした人々の想いが、優しい音楽と共に淡々と綴られています。
アメリカの中西部に位置するコロラド州は、南北にロッキー山脈が貫いており大自然が広がる土地です。多様な植物や野生動物が生息するだけでなく、豊富な化石エネルギー資源にも恵まれており、これまでの西洋文明の発展に欠かせない石炭や石油、天然ガスといった化石燃料の採掘が盛んにおこなわれてきました。
しかし、開発が進む中で、その代償として美しい自然や野生動物の命が失われてきています。この土地はアメリカでも一番大きなミュールジカの群れが生息していて、「deer factory(シカ工場)」と呼ばれています。地元の人々は、昔から変わりなくそこにやって来るシカを大切に想っているのですが、現在その数は激減しています。映像では「以前は何千頭もいたのが、同じ場所で今では数十頭もいれば、いい方だ」と嘆いている地元の人もいます。
経済発展のための開発とそれに伴う環境破壊という問題は、このコロラド州のピケインス盆地だけではなく、今や地球上のあらゆる場所で議論されています。地元の人々や自然保護団体の想い、開発を進める企業の考え、自治体や国の政策方針など、そこには様々な人たちの意見が衝突したり、開発によって生じる利害関係が複雑に絡み合ったりしています。確かに、生活を守っていくために開発していくことは重要です。映像でも「この国は資源が必要なことは知っているし、我々は開発を止めさせるつもりはない」と全米野生生物連盟の男性は言っています。
つまり、世界中のあちこちで言われている通り、今必要なことは「経済と環境の持続可能性」です。パイプラインや道路、資源採掘のための設備を最小限にして、シカや野生生物と共存する方法を考え、実行しなければいけません。映像では「開発を進めても、人が作り上げた生産物はいつかなくなってしまう。それよりも自然という宝物を未来の世代に残したい」「数十年後、ここの天然ガスがなくなってしまったとしても、正しい方法で開発をすればシカは残ってくれる」と切実なメッセージが伝えられています。立場や考えは色々あるけれど、それを脱ぎ捨てたところで残るのは、きっと「美しい自然を子どもたちに残したい」という「人」としてのシンプルな想い。人々が想いを一致させ、シカといった野生動物や植物を未来に残すことが出来るような開発を進めなければいけません。この問題に限らず、映像の最後にも言われているように一人ひとりが声を上げ、そして次世代に自慢できる世界を作りあげることが出来るよう、願ってやみません。
執筆:green writer 植村芳菜
<参考URL>
・全米野生生物連盟・公有地アクションネットワーク
http://www.ourpubliclands.org/
・green.tvで以前ご紹介した「西部からの声」。米国のエネルギー開発と環境について紹介しています。
http://www.japangreen.tv/journal/#/000523