サーモン養殖の裏側に迫る
- Resisted date2009.04.10 |
- Movie Time10:08 |
今回ご紹介する番組は、養殖サケの裏の恐るべき真実を解き明かすドキュメンタリーです。番組を制作したのはECOLOGISTという環境雑誌の映像制作ユニット。サケの養殖で使われているエサがどこから、どんな過程を経て供給されているのか、そこでどんな問題が起きているのかを明らかにしています。10分程度の番組ですが非常に見応えがあり、考えさせられます。
問題となっているのは、イギリス国内の大手スーパーなどで売られている養殖サケ。これらのサケは安く買うことができ、人気が高まっているようです。しかし、その影にはペルーで非常に安い価格で取引されているエサ–アンチョビがありました。そして、その安さの背景にはペルー沿岸の漁港の苦難があったのです。
番組では研究者が現状を突き止めるためにペルー北部のチンボテという40以上の飼料業者と何百ものアンチョビ漁船がある世界最大級の港を訪問。様々な立場の人々に取材を重ねていきました。飼料業者への反対運動を繰り広げて来た活動家は「飼料業者の工場からの煙などによる大気汚染で子供たちに呼吸器系疾患やアレルギー、皮膚病が発生している」とひどい環境汚染の現状を訴えます。地元の小学校の教師も、あまりにも煙がひどいために窓をレンガでふさぎ、そのために教室が息苦しくなり授業ができなくなったこともあるというひどい状況を話します。また、工場は排水処理をしないため、排水が海に垂れ流しになっており、この海洋汚染問題も深刻です。
海の生態系も悪化。食物連鎖で重要な役割を担ってきたアンチョビが激減したことで、それをエサとしてきたクジラ、アザラシ、鳥が苦しんでいます。また、魚の数も急激に減り、地元の貴重な食糧だった魚の値段が急上昇。人々の生活を圧迫しています。これに対して国際的飼料産業組織は「衛星を使い、伝統的な漁をおびやかさないようにしている」と発表していますが、地元の漁師は「そんなことはない、ここは無法地帯だ」と言います。番組の最後には、このエサがどんな企業を通じて英国内に入り、サケが養殖され、一般の人々の手に渡るかが明らかにされます。
養殖された魚のエサに隠されていた、多くの苦しみ。消費者の私たちは食べ物のエサがどこから来たのかまで考え、選ぶ必要があることがよく分かる番組です。日本でも似たような状況があるかもしれません。今後の参考にぜひ見てみてください。
【執筆】阿久津 美穂(Slow Media Works)
http://www.slowmediaworks.net
[関連サイト]
● ECOLOGISTのサイト(英語)
今回紹介した番組を制作したECOLOGISTのウェブサイトです。
http://www.theecologist.org/
● Pure Salmon Campaign(英語)
番組の最後で消費者の私たちが配慮すべきことについてコメントしているPure Salmon Campaignのウェブサイト。今回の問題について詳しく載っています。
http://www.puresalmon.org/