海の動物たちの悲鳴~軍事用ソナーの影響
- Resisted date2008.07.18 |
- Movie Time5:15 |
今回はちょっとだけ見るのがつらいけれど「これは知らなければ」と思った問題がテーマ。それは、ソナーの問題。ソナーとは、音波を使って水中の物体を探知する機械で、20世紀初頭から開発が進められ、現在は漁船や軍艦で使われています。
この番組で問題しているのは、海軍などが使っている軍事用ソナー。番組を制作したアメリカに本部を置く動物・自然保護団体NRDCによると、軍事用ソナーはクジラやイルカなどの海洋生物を傷つけ、時には死に至らしめる可能性があると科学者が言及しており、既に多くの事例が出ています。番組にはアメリカのワシントン州やカリフォルニア州の沿岸、ハワイ、ギリシア、ブラジル、そして日本の事例も入っています。多くの例で、クジラなイルカは脳や耳の周辺に血を流し、死んでいるとのこと。
軍事用ソナーがどのように傷つけるかについては、すべて科学的に究明されているわけではないのですが、最も大きな原因は、ソナーの発する音波。235デシベルの音波が何百、何千キロも先まで届き、同じように音波によってコミュニケーションを取っているクジラやイルカにストレスを与え、ひどい場合は死に至らしめるのです。また、現在明らかな影響が出ているのはクジラが最も多いのですが、魚などにも影響している可能性もあります。
NRDCは、この問題について「軍事用ソナーは一切禁止」というわけではなく、クジラやイルカの移動場所を避けるなどの安全確認をおこなったうえで使用するよう求めています。ここ数年、活動の成果が出ており、2006年には海軍がNRDCからの提案に応えるかたちで、環境への影響をレポートにしました。2008年の始めにはカリフォルニア州の連邦裁判所で、海軍のソナーの使用の際には安全基準を満たしている場所でおこなうという判決が出ました。
なぜ軍事用ソナーがよくないのか、その影響はどんなものか、しっかり説明したうえで、使用の制限は配慮を求めるのは、非常に納得のいく方法です。「どうしたら自分の意見が伝えられるか」という観点から見ても、学ぶべきところが多い番組です。
【執筆】阿久津 美穂(Slow Media Works)www.slowmediaworks.net
<関連Webサイト>
●NRDC ソナーキャンペーンのサイト http://www.nrdc.org/wildlife/marine/sonar.asp
野生動物や自然保護の活動をおこなっているNRDCのソナーに関するサイト。ソナーとは何か、ソナーの影響、NRDCの反対活動の成果などが分かりやすくまとめてあります。
● IFAWのサイト(日本語) http://www.ifaw.org/ifaw/general/default.aspx?oid=89532
約30年前にカナダでアザラシの乱獲を止めようと設立された団体で、現在は世界中で活動する、大規模な野生動物団体の1つとなっています。NRDCとともにソナーの問題に取り組んでいます。