メタンガスで農家は一石三鳥?
- Resisted date2011.06.24 |
- Movie Time3:57 |
動物や人間の排泄物から排出されるメタンガスは、地球温暖化の原因のひとつですが、うまく活用すれば、貴重なエネルギー資源となります。国連の専門機関である国際農業開発基金(IFAD)は、中国政府と協力し、中国の南部・広西チワン自治区で、排泄物からメタンガスを取り出し、家庭用エネルギーとして活用するプロジェクトに取り組んでいます。
このプロジェクトでは、各農家に、タンク型のバイオダイジェスターを設置。家畜や住民の排泄物をここで分解させ、この過程で取り出したメタンガスを、家庭の調理や暖房、照明などに利用する仕組みです。従来、この地域では、エネルギー資源として、石炭や薪が使われてきましたが、これらを燃やすことで多くの二酸化炭素が排出され、薪を集めるための労働にも負荷がかかっていました。そこで、政府は、農家に経済的なインセンティブを与え、バイオダイジェスターの普及を推進。これによって、これまで大気中に放出されるだけだったメタンガスをエネルギーとして有効活用できるようになったのみならず、排泄物の分解の過程で得られた”副産物”である有機肥料によって、より大きく、味のよい良質な作物の栽培が可能になったそうです。つまり、このプロジェクトは、メタンガスや二酸化炭素といった地球温暖化ガスの排出を削減しつつ、各農家に、生活に必要なエネルギーを安定的に供給し、農業の向上にも役立つという、”一石三鳥”となっているのです。
IFADによると、2001年のプロジェクト開始からわずか3年で、2万世帯の農家において、生活水準の改善が見られたとか。現在、この地域の農家には、あわせて300万台以上のバイオダイジェスターが設置され、広西チワン自治区は、中国で最大規模のバイオガス生産地域となっています。地球温暖化防止と、再生可能エネルギーへの転換、農業の持続可能な発展という3つの課題を、同時に解決へと導いている、画期的な事例といえるでしょう。
執筆:松岡由希子
[関連サイト]
国際農業開発基金(IFAD)の公式ウェブサイト(英語)
国際農業開発基金(IFAD)のミッションや発展途上国に向けた具体的な活動内容について、詳しく紹介されています。
「Rural Poverty Portal」の公式ウェブサイト(英語)
地方の貧困問題を解消するための、世界中の様々なプロジェクトを紹介しています。