今あるものを生かす~仏・発電所の試み

alstom_production_efficiency01.jpg太陽光やバイオ燃料・水素など、再生可能エネルギーに関する研究開発が世界中で進められていますが、現在、そして、近い将来でさえも、私たちの使用する電力の多くは、石炭や石油・天然ガスといった化石燃料に頼らざるをえないというのも事実。たとえば、2030年、二酸化炭素排出量の約60%は、現在稼動している発電所から放出されるだろうという予測があるそうです。ゆえに、既存の発電所での発電効率を向上させ、二酸化炭素排出量の削減につなげることは、気候変動対策の現実的な施策のひとつなのです。

alstom_production_efficiency02.jpg動画「Production Efficiency」では、このテーマに取り組むフランスの大手重電メーカー「アルストム(Alstom)」の例を紹介しています。アルストムによると、発電所の効率性を1%向上させるごとに二酸化炭素の排出削減量を2%上乗せできるそうで、電力生産の効率性向上によって、全体で、二酸化炭素排出量を7%程度削減できると見込まれています。そこで、アルストムは、火力発電・風力発電・原子力発電の各分野において、現在稼働中の発電所での電力生産の効率性を向上させるため、装置改善や設備改良などの技術開発に取り組んでいます。タービンや炉の機能などを改善すれば、既存の発電所を活用し続けながら、二酸化炭素排出量を削減し、化石燃料の使用量を軽減することができるというわけです。

alstom_production_efficiency03.jpg私たちの生活には、エネルギーが不可欠。もちろん、このための資源を持続可能性の高いものへとシフトさせていくことは重要ですが、一朝一夕にすべてを変えることはできません。現状をよりよい方向へ変えるアプローチとして、既存の設備や施設を適切に改善・改良し、環境負荷の軽減に努めることも重要なポイント。発電効率が向上すれば、二酸化炭素排出量の削減による環境面でのポジティブな効果があるのみならず、発電燃料を軽減できるので、経済的な観点からも一定のメリットが享受できます。アルストムの例は、いま既に存在しているものをある程度受けいれた上で、「これをどう生かし、次世代につなげていくか?」という発想から、地球温暖化防止に取り組んでいる事例のひとつといえるでしょう。
執筆:松岡由希子

[関連サイト]
アルストン社の発電効率化への取り組み(英語)
アルストン社(Alstom)の発電効率化への取り組みと各発電所での実績が掲載されています。
http://www.power.alstom.com/home/about_us/strategy/clean_power_today/production_efficiency/50435.EN.php?languageId=EN&dir=/home/about_us/strategy/clean_power_today/production_efficiency/