今回紹介する番組は、全米野生生物連盟の制作した”Voices from the West（西部からの声）”という番組です。この番組のテーマは、アメリカ西部のワイオミング州やコロラド州で起こっている石油や天然ガスの採掘による環境破壊です。実際に土地に住む人々の声を丹念に集め、4分の番組にしています。

取り上げられている問題は、できるだけエネルギーの自給自足ができるようにと、野生生物が住む地域も含め、石油やガス産業の企業が次々と開発を繰り広げていることです。それにより、野生生物が悪影響を受け、また、地元に住む人々も牧畜がメイン産業だった、のどかな土地が一変してしまい、仕事の楽しみが奪われたと訴えています。

番組の中では、様々な立場の人のコメントが紹介されます。その土地で牧畜などを営みながら生きて来た人、生まれ故郷に戻り牧畜を始めたものの牧畜の仕事よりも石油やガス会社、弁護士との交渉に時間をとられている若者、その土地に長く住んで来た元教師、全米野生生物連盟のスタッフ、生まれ故郷への愛着とエネルギー自給自足の重要性の議論の間で揺れている町長、エネルギー産業に対して抗議運動を繰り広げている女性など。それぞれの意見に心を揺り動かされます。

すべてのコメントから感じられるのは、野生生物の豊かな美しい土地への強い愛。最後の「この国のエネルギー問題のために犠牲を払っているけれど、ワイオミング州の良さも残さないとね。ここは特別な場所だから。」という言葉には、全ての人の心が詰まっている気がします。「開発のすべてにNOではなく、もっと環境に配慮した開発を」という声が少しでも反映されることを願ってやみません。まずはその一歩として、番組を通して問題を知ってください。

【執筆】阿久津　美穂(Slow Media Works)
http://www.slowmediaworks.net

［関連サイト］
●全米野生生物連盟・公有地アクションネットワーク（英語）
この問題を含む公有地を守る活動に関する詳細、できることなどが載っています。
http://www.ourpubliclands.org/

● ストーリグループ・プロダクションズ（英語）
今回の番組を制作したプロダクションのサイト。
http://www.thestorygroup.org/home.html