野生動物の危機~気候変動が生態系を変える:12

地球温暖化の危機をいろいろな生物の目を通して訴えてきたこのシリーズも今回で最後になります。トリを飾るにふさわしい登場動物は、ヒメヤマセミ、ホッキョクグマそしてヨーロッパヌマガメです。

CLIMATE TRACKERS Part12.01.jpgヒメヤマセミはアフリカから中東、南アジアに生息し、ホバリングから川や池に飛び込んで魚をとる鳥です。VTRでは東アフリカの湖の様子を伝えてくれます。湖の魚の餌といえばプランクトン。そのプランクトンの繁殖に欠かせない条件は、湖面と湖底の水温差です。ところが大気の気温が上昇し、湖水の水温が全体的に上昇、水温差がなくなったことでプランクトンが繁殖しづらくなり、それを食べる魚が減少。魚を餌とするヒメヤマセミなどの鳥類が減ることになるのです。

CLIMATE TRACKERS Part12.02.jpg次はホッキョクグマ。現在北極圏には2万5千頭が生息していますが、公害や密漁で数がどんどん減っています。ところが、それよりもっと恐ろしいのが温室効果ガスなのです。
気温が上昇して氷河が小さくなっているということは近年声高に叫ばれていますが、それだけではありません。北極圏の気温が1970年代終わりから3~4度上昇していることで、氷河の形成スピードが遅くなり、できた氷河が柔らかすぎてすぐに溶けてしまうということも問題になっています。氷河が小さいと、それに乗ってアザラシ狩りに出かけるホッキョクグマは体力を使ったり、流されてしまったり、早めに岸に戻ったりして十分な量を確保できません。
これがどう影響するかというと、冬の間、8か月も母乳で子育てする母グマは、備蓄量が少ないと餌が足りず、母が息絶え、続いて子も息絶えるという結果になってしまうのです。

CLIMATE TRACKERS Part12.03.jpg最後はヨーロッパヌマガメ。北方ヨーロッパに生息するこのカメは、1970年代に北アメリカからペット用に輸入されたアカミミガメが、捨てられ、野生化したものと勢力争いをしたのですが、強力なアカミミガメが幅を利かせてあっという間にその座を奪われてしまいました。アカミミガメは、カメの世界だけでなくその他の動物たちにも悪影響を及ぼし、現在の科学での研究対象になるほどです。
ただ、北方ヨーロッパの池や川は冷たいので、暖かい水温が必要なアカミミガメの産卵には不向きだったようで、その勢力拡大の勢いは少しとどまっているようです。しかし、温暖化で気温が上がってきたら・・・不安は尽きません。

「隣の人は何する人ぞ」という言葉が日本にはあります。動物たちは人間のすぐ隣に住んでいるはず。でも隣の人のことすら知らない私たちが、動物の声に耳を傾けることなど、よほど意識しなければできないことでしょう。
担当している私は、毎回知らないことばかりで、本当に認識不足を感じました。
動物と、人間と、地球が手を取り合う手助けになればいいなと思っています。
執筆:小田原由花

【参考サイト】
●WWFクライメイト トラッカーのHP。(英語)
http://www.climatetrackers.net/