野生動物の危機~気候変動が生態系を変える:11
- Resisted date2010.01.22 |
- Movie Time3:12 |
本シリーズも残すところ2作品となりました。
今回ご紹介するのは、ウェッデルアザラシ、ヘルマンリクガメ 、シャチです。
初めは、ウェッデルアザラシ。南極大陸の海沿いに住んでいて、なんと700メートルの深さまで潜ることができ、さらに1時間ほどその場所で、食糧となる魚を探します。近年の気温上昇で南極の海の水が痩せてきてるのですが、理由は、栄養が豊富な海底の冷たい海水と表面の暖かい海水がうまく混ざらないから。それにより、オキアミとそれを餌にする魚の数が減少、ひいては食物連鎖がうまく機能しなくなり、ウェッデルアザラシの餌は足りなくなってしまうのです。
続いてヘルマンリクガメ。南欧では干ばつが続き、Mediterranean shrubland 地中海の灌木地とwoodland森林地帯では火災が頻発し、長引いている状況を伝えてくれます。
ヘルマンリクガメはterrestrial カメで、欧州の地中海の国の灌木地や草原ではなんと100年も生きることができるそうです。しかも生まれた場所からほとんど移動せず、動いたとしても必ず元の場所に戻れるという、優れた方向感覚の持ち主です。最近では、農業用機械や犬、そしてそれらを飼う人が天敵なのですが、気候変動で地中海地方は火災が多発、毎年100万ヘクタールの森林が消失し、頭を抱えているのです。しかも、出火原因はたいてい人間。干ばつのせいで火事が長引いてしまっています。
最後はシャチ。大西洋の生態系が気候変動で変わってしまっていることを訴えます。
プランクトンは海の生態系の中でも一番底辺にあるものですが、その海域で生息する魚によって好みが変わるため、生態系の中でも最も重要視されています。大西洋北部に生息するシャチの中に、ニシンを好む種がいます。ニシンの好物はカイアシという、海のプランクトンでは最大数を誇る種類のプランクトンです。このあたりの冷たい海流が、気候変動で北部に移動してきていて、それに伴い冷たい海流を好むプランクトンが移動し、ニシンやシャチも北上しています。
大西洋のある地域では、水温の上昇によってある種のプランクトンの数が増えてしまうことで別の種が減り、その地域に生息していた魚の餌は無くなってしまっているという、悪影響が出ています。
遠いところで起きている食物連鎖の破壊。私たちの生活に、すでに影響を及ぼしています。決して、遠くで起きている出来事ではありません。
執筆:小田原由花
【参考サイト】
●WWFクライメイト トラッカーのHP。(英語)
http://www.climatetrackers.net/