野生動物の危機〜気候変動が生態系を変える:8

Climate Tracker お馴染みになってきたでしょうか。今回は、ベンガルトラ、アオウミガメ、ハイイログマの3種が登場します。

まずはベンガルトラ。バングラデシュとインドの間に棲息。一番多く棲息している場所はバングラデシュ南部にある国定公園で、そこは、10万平方キロメートルにわたってマングローブと沼地が広がっています。群れを作らないので広いえさ場が必要で、縄張りは100万キロ平方メートルと言われています。
困っていることは、マングローブに被害が及んでいることです。マングローブは、ハリケーンや津波などから陸を守る、自然の防波堤になっているのです。ダメージを受けている要因は、地球温暖化による海面上昇だけでなく、公害やインフラ整備のために伐採されることのほか、エビを大量に養殖することも上げられています。
あと1メートル、海面が上昇すると、ここのマングローブは消滅し、ベンガルトラは住処を失くします。

CLIMATE TRACKERS Part8.01.jpg次に登場するのはアオウミガメ。緑色の肉がスープとして珍重されています。絶滅の危機は人に捕獲されることだけが要因ではありません。温暖化の影響で海面が上昇したり、洪水が頻発したりすることで産卵する浜辺が浸食されていることも原因になっています。地球の長い歴史の中で、ウミガメたちはその移動ルートや産卵場所を変えてうまく時代の流れに適応し、絶滅の危機を免れてきましたが、近年の温暖化は進行ペースが速すぎて適応しきれていない上、産卵場所に最適と思われる場所が、すでに人間の手でインフラ整備などに使われてしまっているというのが現状のようです。

CLIMATE TRACKERS Part8.03.jpg最後はハイイログマ。ハイイログマは雑食性でヘラジカや植物なども食べます。しかしやはり、クマと言えば産卵のため川を遡るサケを捕まえているイメージですよね。もちろん、サケ漁をするのですが、地球温暖化の影響でサケの数が減少しています。原因は、夏と秋の水温が上昇していること。さらに、冬に大雨が降ることで水量が増し、せっかく産んだ卵やかえった稚魚が流されてしまっています。そうなると、生まれた場所に戻ってくる習性のサケは戻ってこなくなり、ひいては絶滅の危機につながるのです。

今まで目にしていた、当たり前の出来事を見ることができなくなるかもしれない。北海道のお土産として定番の「木彫りの熊」を思い浮かべてしまいました。なんてことのない日常が、とても幸せなことなのです。