気候変動の影響~欧州における洪水リスク対策
- Resisted date2008.07.25 |
- Movie Time8:27 |
京王線で通勤する私の通勤ハイライトは多摩川。青々とした芝が河岸に広がり、ジョギングや犬の散歩をする人たちなどのどかな風景が覗えます。晴れた日には富士山も見えたりしてありがたい。都市内では忘れがちですが、身近な自然といってもよい川。東京都内ではコンクリートで水路設備され、水は緑色、疎遠な存在となっています。
温暖化の問題と共に世界中で勃発している洪水による水害。本コンテンツの背景には2002年欧州を襲った大豪雨による洪水被害があります。大豪雨の影響で数国をまたぐエルベ川、モルダ川そしてドナウ川が氾濫し、チェコ、ドイツそしてオーストリアなど大きな被害を受けました。 100人を超える死亡者、何10万人という人たちが被災、社会基盤を失い、感染病の恐れや精神的な打撃を受け、そして洪水がもたらす環境への影響も深刻です。
温暖化の影響でこれから雨量が増し、洪水の確率は高くなるだろうと予測されています。それをさきがけて欧州委員会は洪水対策とその実施を指令という形でEU加入国に義務つけました。 2007年11月27日に公表されたのが洪水リスク対策指令。2011年までに加入国は各国陸地内の河岸と海岸地域の洪水の危険性を査定し、2013年までにはその調査に基づいた洪水リスク地図を確定。そして2015年までには防止、準備と守備を焦点を当て対策計画を提案し、実践をコーディネートしていくことを目標としています。欧州は協力体制で環境問題に取り組んでいる姿勢や方針が伺えます。
ウィーン付近のドナウ川の水位は史上最高を記録したけれど洪水をまぬがれたのはその都市計画にあると見られています。たウィーン市郊外にあるドナウはんらん原国立公園は洪水対策の良い例として本コンテンツでも紹介されています。1万ヘクタールに及ぶ公園は欧州では珍しくなった湿地林やその中を蛇行するドナウ川の支流などで地元民や観光客の間で人気を集めていています。 洪水対策に積極的に取り組みながらドナウ川を再生にも継続して力を入れています。このドナウ川地区、実は90年代にダム建設による自然破壊を防ぐためにWWFオーストリアと一般市民の募金で現在公園となっている土地を買い取ったという経緯があります。 常に大人しいオーストリア市民が珍しく政府に「ノー」と言った出来事のひとつだとか。その後政府の理解と援助も加わり、ドナウ川再生プロジェクトが始まりました。川を自然な状態に戻すことで災害のリスクを減らすことができる、そして地元の人たちが守った自然が人々の生活を守ってくれているとは。不思議なものです。
【翻訳・執筆】武井菜花子
<関連webサイト>
欧州委員会 環境ページ(英語のみ)
http://ec.europa.eu/environment/water/flood_risk/index.htm
国土交通省の2002年欧州洪水レポート
http://www.mlit.go.jp/river/pamphlet_jirei/bousai/saigai/2002/
水の世紀を生きる (ドナウ川再生について)
http://www.kyoto-np.co.jp/kp/special/water/mizu07.html